2013年(平成25年)1月1日以降に入金された法人の受取利息からは通常の源泉所得税・道府県民税利子割の他に復興特別所得税が追加課税されていますので、計算が複雑になっています。下記のページを参照して仕訳を行って下さい。
⇒復興特別所得税課税に伴う平成25年1月1日以降の法人受取利息の仕訳方法
個人の受取利息
個人の銀行口座に入金された受取利息は源泉徴収済ですので、入金額を改めて所得として申告する必要はありません(ポケットマネーとなります)。
事業用の口座に入金された場合は、入金額を事業主が事業用に拠出したと考えますので、事業主借勘定(事業主から資金を借りた)を用いて個人事業の帳簿に資本として計上することになります。例えば、事業用口座に利息50円が入金されていれば次のように仕訳します。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 50円 | 事業主借 | 50円 |
平成24年12月31日以前の法人の受取利息
法人の普通預金口座に100円の利息が入金されたケースを考えてみます。
源泉徴収される税金と税率
受取利息からは、源泉所得税と道府県民税利子割がそれぞれ差し引かれて入金されています。
税金 | 税率 |
---|---|
源泉所得税(国税) | 15% |
道府県民税利子割(地方税) | 5% |
合計 | 20% |
なぜ所得税と道府県民税なのか?
源泉所得税や道府県民税は個人に課税される税金です。ではなぜ法人の口座から課税されるのでしょうか?
それは、銀行が預金者に対して預金利息を口座へ支払う際にはあらかじめ税金を源泉徴収しておくという仕組みが所得税法で規定されているからです。
利息を集計して各個人全員が利子所得を申告納税するとなると、個人事業を行っていないサラリーマンや主婦だけでなく学生や子供まで、預金口座を持っている国民全員が確定申告をする必要が出てきます。
そうすると税金の徴収漏れや申告ミスが発生しますし、また国民全体に膨大な事務手続きが発生することになりますので、利子所得だけ別計算して一律20%の税金を徴収することで良しとした訳です。
そして、現在の税法ではこの源泉徴収の仕組みが法人の口座にも同じように適用されて源泉徴収されています。
しかし、法人は「利子の税金は何%」「事業所得は何%」というように所得の種類に応じて課税の仕組みを分類しておらず、あらゆる事業活動による利益を最終的に税引前当期純利益という数字にまとめ、そこから申告調整を行って法人税等の税率を掛けて税金を計算します。
したがって、まずは受取利息の純額(入金された金額)から源泉徴収された税金を計算して受取利息の総額を計算し、そこから源泉徴収された税額を「税金の前払い」として処理し、決算の段階で法人税等の税金から控除したり、還付をしたりします。
ですから、受取利息が100円入金されたからといって次のような仕訳をするのは間違いです。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 100円 | 受取利息 | 100円 |
正解は、次のような手順で処理することになります。
- 源泉所得税(15%)の税額を計算
- 道府県民税利子割(5%)の税額を計算
- 利息総額を計算
- 仕訳
1.源泉所得税(15%)の税額を計算
受取利息の純額(入金額)は利息総額の80%であり、利息総額の15%が源泉所得税の税額ですので、源泉所得税の計算式は次の通りです。
入金された受取利息÷0.8×0.15=源泉所得税(1円未満切捨)
上記の100円が入金されたケースに当てはめると源泉所得税額は18円となります。
源泉所得税=100円÷0.8×0.15=18.75円→18円(1円未満切捨)
2.道府県民税利子割(5%)の税額を計算
利息総額の5%が道府県民税利子割の税額ですので、道府県民税利子割の計算式は次の通りです。
入金された利息総額÷0.8×0.05=道府県民税利子割(1円未満切捨)
上記の100円が入金されたケースでは、利子割は6円となります。
道府県民税利子割=100円÷0.8円×0.05=6.25円→6円(1円未満切捨)
3.利息総額を計算
入金額(利息総額の80%)に、源泉所得税(15%)と利子割(5%)を合計した金額が利息総額となります。
入金された受取利息の額+源泉所得税額+利子割額=利息総額
上記の100円が入金されたケースでは、次のようになります。
100円+18円+6円=124円
4.仕訳
貸方に受取利息総額を計上し、借方に普通預金の残高の増加を計上、そして源泉徴収された源泉所得税・道府県民税利子割額を「法人税、住民税及び事業税(法人税等)」勘定で計上します。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
普通預金 法人税等(源泉所得税) 法人税等(利子割) |
100円 18円 6円 |
受取利息 | 124円 |
源泉所得税・道府県民税利子割を「法人税等」で処理する理由
源泉所得税は法人税の前払いとして扱い、利子割は道府県民税の前払いとして扱います。そして、法人税・道府県民税は共に法人税、住民税及び事業税(法人税等)勘定で処理すべきものですので、源泉所得税・利子割も同様に法人税等で処理するのが一般的です。
なお、前払い税金となりますので、正確には仮払法人税等勘定を使用して、決算時に法人税等に振り替えるのが正しい方法ですが、中小企業であれば特に問題はないでしょう。
税額控除または還付請求をする
いずれでも構いませんが、控除のほうが還付金の入金がないため手間は省けます。還付にすると金額が明確に区分されるため視認性は良いといえます。
税額控除とする場合
源泉所得税・利子割を納付した場合、法人税等で処理しますが、法人税等は損金不算入ですので、源泉所得税・利子割共に法人税申告書別表4で加算調整を行い、別表1で法人税額から源泉所得税の額を税額控除し、道府県民税申告書で法人道府県民税から利子割の額を税額控除します。
還付とする場合
納付時に法人税等で処理し、別表4で損金不算入とするところまでは同様ですが、別表1・道府県民税申告書において還付の欄に記載を行います。翌年度に還付がなされます。
翌年度に還付された源泉所得税・利子割の仕訳
源泉所得税は管轄の税務署から還付され、利子割は管轄の都道府県税事務所から還付されますが、還付された額は雑収入として計上します。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 24円 | 雑収入(源泉所得税) 雑収入(道府県民税利子割) |
18円 6円 |
しかし、この雑収入は過誤納した税金が戻ってきただけですので、利益とはならず益金不算入となりますから、別表4で減算調整を行います。
法人税申告書等の作成
税務申告書の作成においては、前期の勘定科目内訳明細書で「法人税等」「雑収入」の摘要欄を確認し、受取利息から源泉徴収されている源泉所得税・利子割の金額や還付金の金額を計算して合計してきましょう。
税理士に税務申告書の作成を依頼する場合は上記の税額の計算と仕訳方法さえ間違えなければ問題ありません。
コメント
昨年度平成26年4月1日から平成27年度3月31日間の普通預金の中には、法人復興税が加算されているのですか。
教えて下さい。
平成25年1月1日以降になりますので当該期間中に入金された利息は全て復興特別法人税が源泉徴収された金額になります。
法人復興税とは復興特別法人税のことでしょうか?仮に法人名義で開設した銀行口座であっても預金口座からの源泉徴収は復興特別所得税ですので、復興特別法人税は関係ありません。ただし、利息から源泉徴収された復興特別所得税は翌年度還付を受けることができますが、その事業年度で確定して翌期になってから2ヶ月以内に支払う復興特別法人税の額から控除することもできます。