瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは何か
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは、雨漏りやシロアリ被害など
住宅の隠れた瑕疵(構造上の欠陥)があった場合に
買主が契約を解除したり売主に損害賠償請求したりすることができる制度です。
瑕疵担保免責(かしたんぽめんせき)は、売主が瑕疵担保責任を負わない特約のことを言います。
瑕疵担保責任の根拠条文(民法第570条)
民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。
ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
民法第566条(地上権がある場合等における売主の担保責任)
(1)売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、
買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、
買主は、契約の解除をすることができる。
この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
つまり、隠れた(買主が通常の注意を払っても知り得ない)瑕疵(構造上の欠陥)がある時は、
- 買主が隠れた瑕疵について善意無過失であることを前提に
- 契約の目的が達成できなければ契約の解除
- 契約の解除ができない時は損害賠償の請求ができる
ということになります。
実務上の取扱い
中古物件の売買においては、
- 売主が瑕疵担保責任を負うか
- 瑕疵担保責任の範囲
- 瑕疵担保責任の期間
の3点を決めることになります。
瑕疵担保責任の有無
瑕疵担保責任をつけるかは
物件の築年数・売買金額・建物の傷み具合を考慮して交渉します。
不動産仲介業者によっても対応は異なり、
中古でも必ず瑕疵担保責任をつける契約をする業者もあれば、
ある程度の築年数の中古物件は瑕疵担保免責で売買する業者もあります。
瑕疵担保責任の範囲
瑕疵の責任は配管・雨漏り・シロアリなど
あらかじめ契約書で決めておくケースもありあす。
例えばシロアリ被害が出た場合は被害部分の木材による補強と薬剤の散布、
雨漏りの場合はコーキング処理、
水道管の漏水の場合は漏水部分の管を切り取り溶接等により交換する等。
ある程度どのような工事を行うか決めておかないと、
どのような工事を行うかで揉めることにもなりかねないからです。
「雨漏りがしたから屋根を全部交換してほしい」
「水道管から漏水しているから水道管を全部交換して欲しい」
「シロアリで木部がやられたから、家の柱を全て入れ替えて欲しい」
また、蛇口が錆びている、パッキンが傷んでいる、
エアコンが壊れる等の室内の問題は瑕疵ではありませんが、
給湯器が故障を瑕疵担保責任に加えるケースはあります。
瑕疵担保責任の期間
売主が宅建業者でない取引においては、
2~3ヶ月が主流です。
売主が宅地建物取引業者、買主が非業者の場合は
宅地建物取引業法により
瑕疵担保責任は2年以上と定められていますので、
2年間の瑕疵担保責任となります。
瑕疵担保責任が2年未満となると
自動的に「買主が瑕疵を発見してから1年間」となり、
業者側に不利となってしまいますので
2年としている業者が一般的です。
なお、新築住宅については10年となっています。
契約をした目的を達することができない場合
行政法規による制約があるケース
買主Aさんが「自宅を建てたいので土地を買いたい」と申し込んで土地を購入しました。
しかし、その土地は大部分(8割)が都市計画街路の境域地内でした。
(つまり、その土地は道路を作るために収容される予定だった土地でした)
しかも、この計画街路の公示は十数年前に公示されていました。
このようなケースにおいて、最高裁は
「右告示の存在を知らなかったことについて過失があるとはいえないときは
本条(売主の瑕疵担保責任)の瑕疵があるといえる」
と判旨しています。(最判昭41年4月14日民集20・4・649、収用百選90)
当事者間において予定されていたか
判例によると、「目的物がどのような性質を有することが予定されていたとみることができるかについては、
売買契約締結当時の取引観念に照らして判断すべき」とのことです。
判例では規制対象のフッ素が基準値を超えて土壌に含まれていた場合でも
瑕疵担保責任における瑕疵に当たらないとされたケースもあります。
(最判平成22年6月1日民集64・4・953、環境百選[2版]45)