収益還元法(しゅうえきかんげんほう)は、
アパートや賃貸マンション等の収益物件を売買する際に
多く利用されている評価方法です。
また、収益還元法による評価額を収益価格(しゅうえきかかく)といいます。
評価対象の物件が評価時点以降に得る地代や家賃などの収益を基準に
評価額を計算する方法です。
不動産の収益力がそのまま評価額に反映されるため、
造りの豪華な豪邸や、土地に無駄な部分が多い物件でも
採算の取れる合理的な価格を簡単に計算出来ます。
逆に、収益力を重視していない住みやすい物件の評価額が
低くなる傾向があり、居住用住宅の評価には向きません。
実務では収益還元で価格を出しつつも、
不動産の構造や設計・設備といったグレードも考慮し
柔軟な価格付けが行われています。
また、収益還元法には計算の簡易な直接還元法と、
現在価値を割引いてより正確に価値を計算するDCF法の2種類に分かれます。
直接還元法(しゅうえきかんげんほう)
ある期間(通常は1年)における利益を還元利回り(かんげんりまわり)で還元し、
評価額を求めます。
利回り(りまわり)とは
利回りとは、不動産への投資金額に対する年間家賃収入の比率を
%(パーセント)で表したものです。
利回り(%)=(年間家賃収入÷投資金額)×100
不動産に1000万円投資し、年間120万円の収益が得られれば、
利回りは12%となります。
(120万円÷1000万円)×100=12(%)
還元利回りで還元する
上記の「不動産価格→利回り」と計算を行うのとは逆に、
「利回り→不動産価格」と計算を行うことを指します。
年間家賃収入÷(利回り×100)=投資金額(円)
例えば、利回り12%で資金を運用したい場合、
年間家賃収入が100万円であれば
100万円÷(0.12×100)≒833.3万円
となります。
DCF法(ディー・シー・エフほう)
将来得られる毎月の利益と売却時の価格(復帰価格)を現在価値に割引し、
それらを合計して評価額を求めます。
計算は複雑ですが、金利や売却時の価格を考慮した
より緻密な評価額を計算することができます。
現在価値に割引する理由
毎月の家賃が10万円とすると、
今10万円もらえるのと1年後に10万円もらえるのとでは価値が異なります。
今10万円もらって10年間銀行に預金して利息を稼いだり、
有価証券に投資して配当を得たりできるからです。
そのため、
今の10万円より1か月後の10万円の方が価値が低く、
1か月後の10万円より2ヶ月後の10万円の方が価値が低い、
という具合に、
収益を受け取れるまでの期間が長ければ長いほど価値は低くなります。
ですので、
もらえるまでの期間が長いほど、将来受け取れる金額から価値を多く差し引いて、
現在もらえたとしたらいくらの価値が有るのかを1つ1つ計算していきます。
これが「現在価値に割引する」という作業です。
そして現在価値に割引いた後の金額を「割引現在価値」といいます。
また、価値を割引く際に基準とする利率のことを
割引率(わりびきりつ)といいます。
割引現在価値の計算
年割引率をiとして、t年後のx円の現在価値は、下記のように表します。
(ただしインフレ率を0%とします)
割引現在価値の計算例
銀行に預金すると3%の利息が付くため、
割引率3%とし、年間100万円の家賃を現在価値に割引くとします。
また、10回目(10年後)の家賃を受け取る際に、同時に1300万円で売却するとします。
計算を簡略化して家賃は年1回もらえるとすると、
下記のようになります。
受取時期 | 受取金額 | 割引現在価値 の計算式 |
割引現在価値 (小数点以下四捨五入) |
1年後 | 1,000,000円 |
970,874円 |
|
2年後 | 1,000,000円 | 942,596円 | |
3年後 | 1,000,000円 | 915,142円 | |
4年後 | 1,000,000円 | 888,487円 | |
5年後 | 1,000,000円 | 862,609円 | |
6年後 | 1,000,000円 | 837,484円 | |
7年後 | 1,000,000円 | 813,092円 | |
8年後 | 1,000,000円 | 789,409円 | |
9年後 | 1,000,000円 | 766,417円 | |
10年後 | 14,000,000円 | 10,417,315円 | |
受取金額合計 23,000,000円 |
割引現在価値合計 18,203,425円 |
ただし、これには経費や空室リスクが計算に入っていないため、
これよりも安く購入する必要があります。
個別の評価方法
- 原価法による積算価格の計算方法
- 収益還元法による収益価格の計算方法
- 取引事例比較法による比較価格の計算方法