投資用物件で唯一注意すべき点は、「元本を回収できる物件を買う」ことです。したがって、次のような物件を買うと元本を回収できない可能性があります。
- 元本を回収し終えるまでに耐用年数を迎える物件
- 元本の回収が終わる頃のその地域の未来が見えない物件
- 入居者が決まりづらい物件
元本を回収し終えるまでに耐用年数を迎える物件
これは逆に言えば、「耐用年数を迎えるまでに元本を回収しないといけない」ということです。なお、ここでいう耐用年数とは「法定耐用年数」のことではなく「建物が利用できなくなる年数」のことを指します。
不動産は適切なメンテナンスをすれば木造であっても50年以上維持することはできますが、実際には様々な要因があり長持ちしない物件もあります。そういった物件を仕入れる際は、その物件が使えなくなるまでに余裕で回収してしまえる価格で購入する必要があります。
もちろん、次に挙げるような「長持ちしない物件」であっても、高い利回りで購入すればリスクを補って余りあるリターンを得られますので、そういった物件をメインに取得する戦略もありです。
雨漏り物件
程度の問題がありますが、ここでは軽微な雨漏りや過去に大型台風等で一度だけ発生した雨漏り、補修済みの雨漏りで強度に問題のないものは除きます。それ以外の程度のひどい雨漏りがある物件はどの建物構造であってもあまり長持ちしません。
木造(W造)の場合、ただ単に壁や天井が痛むだけでなく、主要構造部である木部が腐ってしまいますので、耐震性も低下します。
鉄骨造(S造)の場合、木造と異なり雨漏りで構造が脆くなることはほとんどありませんが、雨漏りを止めない限りは建物が痛み続けます。
RC造(鉄筋コンクリート造)の場合、コンクリートにひび割れが生じて雨漏りが生じていることが多いので、コンクリート内部の鉄筋に雨が付着しサビが生じ、錆びた鉄が膨張してコンクリートを破壊し(爆裂)、強度が低下します。コンクリートのひび割れ(クラック)からサビが噴き出してきて見た目も悪化します。
また、物件を売却する場合にも、雨漏りがある物件は売却時に告知事項として買主に告知する義務がありますので、買主も購入に躊躇してしまいますし、宅建業者であれば必ず2年間の瑕疵担保責任を負わなければならないため、基本的に雨漏り物件の買取評価はかなり下がります。
さらにひどいケースでは、区分所有物件の共用部を原因とした雨漏りです。最上階であればまだ良いのですが、例えば10階建の5階部分から雨漏りがするというようなケースもあり、この場合は雨漏りの原因箇所の特定は困難ですので、うかつに購入してしまうと大変です。
シロアリ(白蟻)
実はゴキブリの仲間に分類されるシロアリですが、シロアリは木造だけでなく鉄骨やRC造の物件にも被害を与えます。
鉄骨の場合、建物の強度に影響をあたえることはそんなに無いので、侵食された部分を補修すればそんなに問題にはなりません。RC造は1階部分の床下の木部が被害をうけることがありますが、こちらも最悪木部を入れ替えれば何とかなります。
問題は木造の場合ですが、建物の強度に影響する構造部分が侵食されると耐震性が低下します。実際、阪神大震災の時に専門家が神戸市東灘区の家屋を調べたところ、シロアリ被害のあった家屋のほとんどが全壊していたことが判明しています。
また新潟県中越地震では柏崎市内の損壊のひどい家屋のほとんどに腐食がみられ、また約7割に白蟻の食害があったことが判明しています。
元本の回収が終わる頃のその地域の未来が見えない物件
日本全体では人口が減少していますが、ミクロ的には人口が未だに増えている地域と減っている地域に分かれます。気をつけるべきなのは「人口が減り続けている地域」の物件です。
人口が減り続けている地域では、近い将来に賃貸物件の戸数に対して圧倒的に地域の人口が少ない時代が訪れます。空室率はどんどん上昇し、空き家同士の価格競争で賃料がどんどん下落していきます。地域によっては賃料をいくらに設定してもそもそも借り手が現れないという状況にもなりかねません。
たとえ回収できたとしても、地域は衰退し、建物は古くなり土地の価値は殆ど無い、という状況では、投資する価値はほとんどありません。
入居者が決まりづらい物件
地域の将来性や耐用年数は「将来的に収益が上がらなくなる可能性」の話になりますが、そもそも現時点でも入居者が決まらない物件を購入しては何の意味もありません。
最近では空室率の上昇で賃貸物件の競争が高まっていますので、それなりに空室対策をしただけではなかなか埋められない物件も出てきています。例えば次のような物件が挙げられます。
狭すぎる物件(15㎡未満)
20㎡未満になるとバス・トイレ別の物件ではかなり居室が狭くなり、15㎡未満になるともはやバス・トイレ・洗面台が一体となった3点ユニットであっても居室は布団と机と少しの収納を置けば部屋がいっぱいになってしまいます。
15㎡以下の物件はよほど他に優れた条件でもない限りなかなか入居者は決まりませんし、仮に決まったとしても相場よりかなり安い賃料になってしまいます。
20㎡未満の物件の場合、バス・トイレをセパレート(分離)にした場合、かなり居室が狭くなってしまいますし、一体型のままですとやはり相場賃料より安くなりますので、運用に苦労します。
できれば20㎡を超える物件で、現在3点ユニットが入っていても将来的にバス・トイレ別にリフォームできるような物件を選ぶ必要があります。
立地が悪すぎる物件
電車での移動が必須の地域にも関わらず、利便性が悪く乗降車数の少ない駅から徒歩15分以上かかる物件や、主要な国道や路線から車で20分以上離れたところにある買い物に不便な田園地帯の物件など、あまりに立地が悪い物件は賃貸付けに非常に苦労します。
このような物件では満室想定での収益の半分も出ないことが多いですし、また空室が多すぎると建物が痛み、入居者募集の販促や空室の管理に思った以上に時間もコストも掛かります。
マイカー通勤圏のファミリータイプで駐車場が少ない物件
自動車必須の立地でファミリータイプ(4LDKなど)の間取りにもかかわらず、軽自動車一台分の駐車スペースしか無いといった物件も賃貸付けに苦労します。
家族がそれぞれ自動車1台を所有する地域であれば、自動車1台分のスペースしかない場合は近隣に十分な空きのある駐車場があるか、もしくは駐車スペースを予め確保してからでないと、賃貸経営は困難です。
費用をかけて外壁を壊して庭を駐車場として使うという方法もありますが、庭と地面の高低差が大きい場合は困難です。
エレベーター無しの区分所有で5階以上の物件
エレベーター無しの場合、ワンルームであっても5階以上はかなり苦戦します。特にファミリータイプは注意。
ただし、駅から非常に近い場合や室内を完璧にリフォームしてある場合は意外とすぐ入居者が決まったりします。
間取りが細長いまたはいびつな形の物件
間取りが細長い場合、2部屋を造作すると奥の部屋に行くには中央の部屋を通過しなくてはならず、プライバシーが確保できないため不人気物件になります。実際に2DKの賃貸物件を検索すると相場の底値であふれているのがこの手の物件です。1LDKに改装して採算が取れるかがポイントです。
いびつな形の物件は、浴室・トイレ・キッチン・洗面台・洗濯機置き場の配置が使いづらい場合が多く、同じく不人気物件の代表格です。フルリフォームをかける場合であっても、洗面台や脱衣所が確保できなかったり、洗濯機置き場に困ったりと 、仕上がりが残念な物件になりがちで、お荷物物件として売れ残ることが多いのです。
特に狭くていびつな形の物件はどうしようもない場合が多く、相場よりずっと安い金額で無理やり賃貸付けするか、乱暴に事務所として格安で貸し出されるしか利用法が無かったりします。
事故物件
いわゆる事故物件です。事故物件には買主・借主にその旨を知らせる告知義務があります。全ての事故物件が問題というわけではなく、賃貸が付く物件もありますが、よくわからずに手を出すと売却もできず手がつけられなくなる場合もありますので、プロ以外は触らないのが賢明です。
例外的なケース
上記の物件のように将来性がない物件であっても、欠点を補うほどお買い得な価格であれば、運用する価値がある場合があります。また、物件としては問題がない場合でも、回収期間が長すぎる場合は投資不的確といえます。ケースバイケースですので個別の物件ごとに判断する必要があります。
ただし、失敗すれば安値で投げ売りする選択肢しかなくなるという場合もありますので、上級者向けと考えておいたほうがよいでしょう。