投資目的で戸建を購入した場合の仕訳方法について解説するよ(`・ω・′ )
土地・建物は有形固定資産に計上する
まず、土地と建物の売買代金は貸借対照表(B/S、バランスシート)では有形固定資産の「土地」「建物」という勘定科目で計上されます。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
土地 建物 |
xxx円 xxx円 |
現金 | xxx円 |
土地は売却するまで基本的には最初に取得した時の価格(取得価格)のままバランスシート上に計上され、建物は減価償却をする場合は少しずつバランスシート上の金額から減っていきます。
なお、建物は法人の場合、減価償却しないという選択肢もあります。
売買代金のうち土地・建物の価格が記載されていない場合
土地と建物の価格が記載されていない場合、消費税額または固定資産税評価額をもとに土地・建物価格を計算します。
消費税額が記載されている場合
次の金額で建物価格を計算します(消費税8%の場合)。
消費税額 ÷ 8 × 108 = 建物価格(税込価格)
土地代金は売買代金から建物価格を差し引いて求めます。
売買代金 – 建物価格 = 土地価格
消費税額が記載されていない場合
この場合消費税額の逆算による建物価格が計算出来ないため、固定資産税評価額で按分されるのが一般的です。
売買代金 ÷ (土地建物評価額の合計額) × 建物評価額 = 建物価格
不動産の所在地を管轄する市区町村の固定資産税課にて取得できる「評価証明書」や「公課証明書(関係証明書)」に「平成●●年度価格」または「評価額」と記載されているものが固定資産税評価額です。公課証明書はこんな感じ↓
※一部白塗り消去済
なお、「固定資産税課税標準額」は、固定資産税の税額を計算するための金額(課税標準)で、減税などが考慮されている場合がありますので、こちらは使用しません。間違えないように(`・ω・′ )
売買代金が1,000万円として、評価証明書に次のように記載されていたとします(本来は土地・建物の評価証明は別々に発行されます)。
固定資産評価証明書 | ||
---|---|---|
土地 | 建物 | |
平成26年度価格 | 5,600,000 | 3,400,000 |
▼建物価格を算出
10,000,000 ÷ ( 5,600,000 + 3,400,000 ) × 3,400,000 ≒ 3,777,778円(建物価格)
▼土地価格を算出
10,000,000 – 3,777,778 = 6,222,222円(土地価格)
売買代金以外に取得価格に含める費用
土地・建物以外にも、それを取得するために要した費用のうち一部は土地と建物の金額に按分して土地・建物の売買金額に上乗せすることになります。
仲介手数料
土地・建物の金額に按分します。
売買代金が1,000万円(土地600万円、建物400万円)、仲介手数料が38万円とすると、次のように按分します。
▼土地価格に上乗せする分
38万円 ÷ 1,000万円 × 600万円 = 228,000円
▼建物価格に上乗せする分
38万円 ÷ 1,000万円 × 400万円 = 152,000円
と按分します。
固定資産税・都市計画税清算金
固定資産税と都市計画税(以下、固定資産税等)は1月1日時点で不動産を所有しているオーナーに課税されますが、この税金は1月1日の所有者に全額課税(全額負担)しますので、その年に売却しても税金は還付されず、新所有者には1円も課税されません。
したがって、固定資産税等を日割り計算して精算(購入の場合ですので、支払い)した時は、この清算金は税金の納付ではなく、あくまで売主の税金負担額が多額にならないようにするものですので、売買代金の一部とされます(・ω・)ノ
固定資産税等 ÷ 365 × 決済日から12月31日までの日数 = 固定資産税等清算金
仮に固定資産税等の合計額が5万円で、1月21日に決済を行った場合、1月1日〜1月20日までの20日分は売主が負担し、1月21日〜12月31日までの345日分は買主が負担しますので、
5万円 ÷ 365(日) × 345(日) ≒ 47,260円
が、取得価格として含まれます。
取得価格に含めずその年の損金とする費用
売買代金、仲介手数料、固定資産税等清算金以外の金額については、通常の費用と同様に扱います(・ω・)ノ
なお、取得価格に含める方法も認められているようですが、取得価格の計算が面倒になりますし、取得価格に含めないほうがその年の費用を多く取れますので、全額損金でヨイと思います(・ω・)
登記費用
登記費用といっても司法書士報酬から書類郵送費まで多く分かれますので、司法書士から受領する領収書に記載された明細を見て丁寧に仕訳をします。
使用すべき勘定科目の目安は次の通りです。
費用 | 勘定科目 | 消費税 |
---|---|---|
司法書士報酬 (消費税含む) |
支払報酬 支払手数料 |
課税 |
登録免許税 | 租税公課 | 不課税 |
登記事項証明等 の取得費用 |
租税公課 | 不課税 |
書類郵送費 | 通信費 | 課税 |
源泉所得税 | 預り金 | 不課税 |
源泉所得税は、法人が司法書士(個人)に報酬を支払う際に源泉徴収を支払う必要があります。
支払日の翌月10日までに源泉所得税の納付書を使用して源泉所得税を納める必要がありますが、通常法人を設立する際に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」というものを提出していますので、その場合は1〜6月に徴収した源泉所得税は7月10日までに、7〜12月徴収分は1月20日までにまとめて納付します。
通常、法人の場合は代表が役員報酬を取っていますので、役員報酬から源泉徴収する源泉所得税を納付する際に同時に納めればよいのでさほど手間はかかりません。
なお、納期の特例については国税庁HPに詳しく記載されています。
[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁HP)
不動産取得税
租税公課で計上。
契約書に貼付する収入印紙
租税公課で計上。
賃貸中の投資用不動産(オーナーチェンジ物件)を取得した場合の賃料清算金
売上高で計上。
なお、住宅として貸し付けていれば賃料は消費税が非課税になるため、売上高に「住宅賃料」という補助科目を設定するか、売上高とは別に「不動産賃料収入」といった勘定科目を設定するのがおすすめです。
オーナーチェンジ物件の敷金清算金
「預かり敷金」「預り保証金」等で負債として計上します。
区分所有マンションの管理費・修繕積立金清算金
販売費及び一般管理費の中に「管理費・修繕積立金」「マンション管理費等」等の勘定科目を追加して計上します。
修繕積立金はほぼ費用処理できる
修繕積立金は管理組合で修繕に備えて貯金するためのものですので、本来は資産計上すべき金額です。
しかし、使用状況を正確には把握できない点や購入前の積立金との区別が曖昧な点、区分所有者へ原則として返還されない点、金額が小さい点等を考慮すると、資産計上するのは無理があります。
なお、国税庁HPによると、次の5つの条件を満たす場合は修繕積立金を支払った年の必要経費にできるとあります。
- 修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従っていること
- 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること
- 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
- 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
- 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること
この条件は大抵の区分所有マンションに当てはまるので、修繕積立金は費用処理で問題ないでしょう。
逆に資産計上しなければならない例としては、管理組合を私物化して高額な修繕積立金を設定し貯金代わりに積み立てたり、組合で決められた額以上の修繕積立金を支払ったり、修繕に使う予定もないのに異常に多額の修繕積立金を蓄積する等があげられるんじゃないでしょうか。
賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い(国税庁HP)
仕訳例
個人の売主より投資用不動産を購入した場合を想定して仕訳をしてみます。計算上、万単位で記載します。まず、決済時の代金明細書を確認します。
項目 | 金額 |
---|---|
売買代金 | 200万円 |
固定資産税等清算金 | 1万円 |
仲介手数料 | 10万円 |
賃料清算金 | -2万円 |
敷金清算金 | -5万円 |
決済代金合計 | 204万円 |
まずは取得価格を按分
売買契約書には建物・土地価格の区分がなく、消費税額の記載もなかったため、固定資産税評価額で按分し、土地50万円、建物150万円(消費税込)の比率になったとします。
取得価格の合計は、売買代金・仲介手数料・固定資産税等清算金の3つを合計します。
取得価額 = 200万 + 1万 + 10万 = 211万円
建物価格は按分計算で算出します。
建物価格 = 211万 ÷ 200万 × 150万 ≒ 158万円
土地価格は取得価格から建物価格を差し引きます。
土地価格 = 211万 – 158万 = 53万円
明細書でプラスの金額のものをまとめる
売買代金・固定資産税等清算金・仲介手数料は建物・土地としてカウントします。
建物 158万円
土地 53万円
明細書でプラスになっている金額、すなわち取引の対価として支払った金額は、そのまま「資産」または「費用」として計上されるため、これは借方(左側)に仕訳されることになります。
明細書でマイナスの金額のものと決済代金をまとめる
本来は不動産を200万円で取引すると200万円の金銭を対価として支払いますが、賃料や敷金の清算金など買主側が受け取る金銭が10万円分あれば決済代金からマイナスされますので、200万円の不動産にも関わらず支払う額は190万円となります。残りの10万円は「利益」か「債務の引受」ですので、「収益」または「負債」として貸方(右側)に仕訳されることになります。
今回の場合、賃料日割分を収益として受取り、買主として敷金の債務を引き受けるために敷金相当額を決済代金から差し引いたため、この金額をまとめます。残りは差額としての決済代金が「資産の減少」として借方に記載されます。
賃料清算金 2万円
敷金清算金 5万円
決済代金 204万円
仕訳
まとめたものを仕訳していきます。
なお、賃料清算金は買主側の受取ですので売上高として計上します。できれば「住宅賃料」等の補助科目を設定することをおすすめします。
敷金清算金は賃借人が退去した時の敷金返還債務を引き受けたため、負債の預かり敷金として計上します。預かり保証金でも構いませんが、他の名目の保証金と住宅敷金を区分するために預かり敷金としての計上がおすすめです。
なお、「敷金」「差し入れ敷金」等は敷金を支払った時の債権として資産に計上するものですので間違えないように注意して下さい。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
建物 土地 |
158万 53万 |
売上高 預かり敷金 現金 |
2万 5万 204万 |
その他、登記費用・契約書貼付印紙代・不動産取得税・固定資産税等は、それぞれ別個に仕訳していけばOKです(ノ)・ω・(ヾ)