保険業法改正に伴い、2015年10月1日以降の火災保険に各種変更点があります。特に都心の区分所有マンションの保険料が値上がりとなったり、長期の保険契約に長期自動継続方式が採用されるため、是非目を通しておいて下さい。
改正保険業法が適用されるのはいつから?
契約始期日が2015年(平成27年)10月1日以降となる契約について改正保険業法が適用されます。
つまり、2015年9月以前に契約しても、保険期間が2015年10月1日以降であれば適用されることになります。
したがって、改正保険業法以前に駆け込みで保険契約を行いたい場合、保険始期日を2015年9月30日以前にすれば良いということになります。
始期日が2015年9月30日以前であれば、そこから期間36年の保険契約を行い、一括で保険料を支払うことも可能ですので、今のうちに保険契約を行ったほうがよいでしょう。
保険業法改正内容
主要な改正内容は主に次の3点です。
- 自然災害が増えたことによる保険料改定
- 引き受け可能な保険期間が最長10年に
- 補償内容の明確化
自然災害が増えたことによる保険料改定
火災保険
構造や地域により保険料が値上がりの地域も値下がりの地域もありますが、大都市圏・RC造の共同住宅(区分所有マンション)・旧耐震基準で建築された物件は10〜30%程度の値上がりとなり、また九州地方は全体的に大幅な値上げとなります。
非常に数の多いRC造区分所有マンションは全都道府県で値上がりとなります。
借家賠償責任保険・家財保険(いわゆる入居者向け火災保険)
家財保険が全体的に値下げとなり(5〜10%程度)、個人賠償・借家人賠償が値上げとなります。
実際には保険料自体は定額で2万円(2年間)といったプランが多いため、家財保険料の値下げ部分が個人賠償と借家人賠償の保険料の値上げに充当されると思います。
引き受け可能な保険期間が最長10年に
2015年9月までは、期間35年の住宅ローンの期間に被せて同期間の火災保険に一括払いで加入することが出来ましたが、今回の保険業法改正により最長10年間の保険期間となるため、一括で35年分を前払いして火災保険に加入する、といったことができなくなります。
理由としては、今後災害の増加が見込まれるため、最長10年の契約を更新する毎に保険料の見直しを行い、更新後は改定後の保険料を適用する、といった運用に変わるためです。
不動産業界では「35年ローンの火災保険はどうなるのか」といった不安がありましたが、2015年10月以降に「長期自動継続方式」が新設され、融資期間11年以上の住宅ローンによる自宅の購入者に対してはこの方法が適用されます。
長期自動継続方式
自宅の購入時に保険期間10年で新規契約を行い、10年おきに自動継続されます。
保険期間中に補償内容や保険料が改定された場合、自動継続後の契約から改定後の内容となります。つまり、10年おきに保険契約が見直されることになります。
従来は35年分の保険料を一括払いできましたが、2015年10月以降に住宅ローンを組んで自宅を購入して火災保険に加入する場合は10年後以降の25年間は火災保険料の金額に変動がある可能性が高く、多少のリスクとなります。
補償内容の明確化
風災
- 雨を伴わない吹き込みも対象
- 建物外壁・屋根・開口部の破損が条件となる
- 間接破損も対象となる
雪災
- 融雪による漏水や凍結は対象外
- 除雪時の事故は対象外
落石・土砂崩れ
台風・暴風雨・豪雨を伴う場合、土砂崩れ・落石ともに水災扱いとなります。
上記以外の場合、土砂崩れは「不測かつ突発的な事故」扱いとなりますが、単なる落石は「物体落下」扱いとなります。
不動産投資家が取るべき対応
まず、資金繰りや投資効率や出口戦略を考慮しつつ、現在の火災保険を2015年9月30日までに長期の保険期間の契約に切り替えることをおすすめします。
ただし、あまりに長期の契約にすると、契約期間中に売却しても解約返戻金は残存期間の保険料を等分計算して返金してくれるわけではなく、実際にはかなり少なめの金額になります。売却予定なども見据えて5〜10年程度の長期契約が良いでしょう。
また、大型の一棟RCマンションを購入する場合、契約始期日が2015年10月1日以降になると保険料が2割ほど割高になる可能性が高いため、長期一括で保険契約を行う場合は資金繰りや利回りに影響してくるでしょう。予め値上げを資金計画に織り込んだ上で価格交渉されることをおすすめします。