復興特別所得税の概要
2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間、東日本大震災復興のための復興特別所得税が課税されます。
従来(2012年以前)は預金利息に対して所得税15%・住民税5%が源泉徴収により課税されていましたが、2013年以降は復興特別所得税が追加で源泉徴収されます。金額は所得税額の2.1%です。
また、復興特別法人税が平成27年2月末に終了する2月決算法人を最後に終了したので、復興特別所得税を復興特別法人税申告書で還付できなくなりました。今後は復興特別所得税を源泉所得税とみなし、合わせて法人税申告書で還付請求するか、または法人税額から控除することになりました。
2012年以前の法人の受取利息の仕訳
個人事業主の受取利息は利子所得となりますので仕訳に変更はなく、法人においても平成24年12月31日までの受取利息については従来の方法で利息の仕訳を行いますので、下記のページを参照してください。
⇒ 受取利息の仕訳における源泉所得税15%(国税)と利子割5%(都道府県民税)
復興特別所得税の計算方法と仕訳
平成25年以降の受取利息は下記の金額が差し引かれます。
税金 | 税率 |
---|---|
国税(源泉所得税) | 15% |
国税(復興特別所得税) | 0.315% |
地方税(道府県民税利子割) | 5% |
合計 | 20.315% |
※復興特別所得税は源泉所得税額の2.1%ですので、15%×0.021=0.315%となります。
なお、源泉所得税は“源泉徴収された所得税”くらいの意味ですので、ここでは所得税と同じと考えて構いません。
仕訳の手順は下記のようになります。
- 所得税および復興特別所得税の合計額を計算
- 復興特別所得税を計算
- 所得税を計算
- 利子割を計算
- 利息を計算
- 仕訳
所得税と復興特別所得税の計算
入金された利息は利息総額の79.685%(1-20.315%)であり、その利息総額の15.315%が所得税および復興特別所得税の合計額ですので、
入金された利息÷0.79685×0.15315=所得税および復興特別所得税の合計額(1円未満切捨)…(A)
(A)÷102.1×2.1=復興特別所得税の額(50銭以下切捨、50銭超を切上)
(A)-復興特別所得税の額=所得税額
となります。
預金に利息として777円が入金されたケースは以下の通りです。
所得税および復興特別所得税の合計額=777円÷0.79685×0.15315=149.3349…→149円(1円未満切捨)
復興特別所得税の額=149円÷102.1×2.1=3.0646…→3円(50銭以下切捨、50銭超を切上)
所得税の額=149円-3円=146円
都道府県民税の利子割の計算
利子割は所得税からの算出が困難になったため別に計算します。
入金された利息÷0.79685×0.05=利子割(1円未満切捨)
利息入金額が777円の上記のケースでは、
利子割=777円÷0.79685×0.05=48.7544…→48円(1円未満切捨)
となります。
利息を計算
入金された利息+所得税+復興特別所得税+利子割=受取利息
上記の777円が入金されたケースでは下記のようになります。
受取利息=777円+146円+3円+48円=974円
仕訳
源泉所得税・利子割額を「法人税等」として損金計上します。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
普通預金 法人税等(源泉所得税) 法人税等(復特所得税) 法人税等(利子割) |
777円 146円 3円 48円 |
受取利息 | 974円 |
源泉所得税・復興特別所得税・利子割を「法人税等」で処理する理由
預金から源泉徴収される源泉所得税・復興特別所得税・利子割は
個人の預金利息に対して徴収される税金です。
したがって法人には本来かからない税金です。
しかし、個人・法人共に預金に対しては一律に源泉徴収されるため、
納付した源泉所得税・復興特別所得税・利子割は後に法人税等の納税額から控除するか、
または還付請求をすることになります。
実務上は、この源泉所得税・復興特別所得税・利子割を
一旦「法人税等」で損金計上(経費と処理する)し、
法人税申告の段階で別表4において加算(損金不算入)して法人税額等を計算します。
そして、確定した法人税額から源泉所得税を税額控除するか、
または税額控除せずに還付請求をします。
利子割も同様に、法人道府県民税の法人税割額から利子割を税額控除するか、
還付請求をします。
復興特別所得税は法人税から控除することはできませんので、
復興特別法人税から控除するか、もしくは還付請求します。
仕訳の際に「法人税等」で源泉所得税と復興特別所得税を区分するのはそのためです。
(注)法改正により現在復興特別法人税は課税されていないため、復興特別所得税は源泉所得税とみなし、従来の源泉所得税と合わせて法人税申告書別表1で還付請求を行います。
翌年度に還付された源泉所得税・復興特別所得税・利子割の仕訳
還付された源泉所得税・復興特別所得税・利子割は、
過誤納した税金が戻っただけですので利益ではありません。
実務上は、還付された税額を一旦「雑収入」で益金として計上し、
法人の所得を計算する法人税申告書別表4において減算(益金不算入)します。
借方科目 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 197円 | 雑収入(源泉所得税) 雑収入(復特所得税) 雑収入(利子割) |
146円 3円 48円 |
処理の流れ
このように、源泉所得税・復興特別所得税・利子割は
- 損金計上→損金不算入→税額控除
- 損金計上→損金不算入→還付請求→還付金を雑収入計上→益金不算入
のいずれかで処理することになります。
コメント
非上場の法人でも復興特別所得税の計算方法と仕訳
の法人の欄と同じと考えていいでしょうか。
>yoshibouさん
法人税法上の普通法人(株式会社・特例有限会社・合同会社等)は全ての所得を合計して税率をかけて税額を計算しますので、非上場企業でもこの計算方法で大丈夫だと思います。
預金から20.315%を源泉徴収するのは所得税法上自然人(個人)の利子所得は一律源泉分離課税となっているためですので、自然人ではない法人はこのような面倒な作業が必要となります。
よろしくお願いします。
2013年3月期
普通預金 777 受取利息 974
法人税等(源泉所得税) 146
法人税等(復興所得税) 3
法人税等(利子割) 48
未収金 146 / 法人税等(源泉所得税) 146
未収金 3 / 法人税等(復興所得税) 3
未収金 48 / 法人税等(利子割) 48
2014年3月期
上記未収金が入金(還付)された
普通預金 197 / 未収金 197
この場合の別表四、五の記載方法を教えてください。
また2014年3月期で新たに発生した受取利息の仕訳は
下記の通りで、今度は還付ではなく控除する予定です。
(数字はデタラメです)
普通預金 2710 受取利息 3000
法人税等(源泉所得税) 200
法人税等(復興所得税) 10
法人税等(利子割) 80
この場合の別表四、五の記載方法を教えてください
よろしくお願いします。
boobooさん
正確には2013年3月期の決算書と税務申告書を修正する必要がありますのでご注意下さい。今回は少額ですので特に問題は起きないと思いますので次のように処理して間に合わせる方法もあるかと思います。
2013年3月期に本来「法人税等」で処理するところを「未払金」としていますので、2013年3月期の法人税申告においては加算調整せず、また2014年3月期の還付金も収益として処理していませんので、減算調整は不要として処理する。
2014年3月期の分につきましては、法人税等で処理されていますので、加算調整が必要となります。
【別表4】
損金経理をした道府県民税利子割額(4)→80円(留保に転記)
法人税額から控除される所得税額及び復興特別法人税額から控除される復興特別所得税額(31)→210円(社外流出に転記)
【別表5(1)】
過納道府県民税という区分を設け、増(3)→80円とします。
未納道府県民税の中間分も80円とします。
【別表5(2)】
道府県民税の当期分の利子割の当期発生税額・損金経理による納付にそれぞれ80円とし、1つ下の確定の当期発生額・期末現在未納税額で△80円とします。
また、その他の損金不算入のものに「源泉所得税」を設け、当期発生税額→210円、損金経理による納付→210円とします。
翌期に還付金が入金されましたら減算調整が必要となります。
実務をするのが初めてで毎日バタバタしております。
預金利息についてとてもわかりやすく説明されていて助かりました。
が…..預金利息が5円の場合どうしたらいいのでしょうか。
5円の場合は1円未満切り捨てになりますので源泉所得税・復興特別所得税・道府県民税利子割全て0円になります。
(仕訳例)
普通預金 5円 / 受取利息 5円